日々の綴りごと

「家」と「住まい」について考える

「家」と「住まい」。
似ているようで、その響きの奥には少し違う景色が広がっています。

日々、住まいづくりに携わる中で、その違いについてふとした瞬間に思いを巡らせるようになりました。

「家」とは、物理的な建物を指すことが多い言葉です。
「新しい家を建てる」「家を購入する」といった表現に使われるように、そこには建築物としての側面が強く表れます。
一方で、「住まい」は、そこに人が暮らし、生活が営まれているという温かな気配を感じさせる言葉です。

例えば、あるお宅を訪ねたとき、「素敵な家ですね。」と言うよりも、「素敵な住まいですね。」と言った方が、その場に流れる空気感や、ご家族の営み、年月とともに染み込んだ温もりまで伝わってくるように感じませんか?

「家=器」、「住まい=暮らし」と表現すると、少し分かりやすいかもしれません。

家はあくまでも器であり、その中にどんな暮らしが息づくかによって、住まいとしての表情が変わっていきます。
家を建てた瞬間は、器としての役割が与えられますが、そこに住む人が時間を重ね、日々の営みが積み重なることで、住まいへと変わっていくのです。

だからこそ私たちがつくりたいのは、単なる家ではなく、住まいなのだと思います。

家を建てることがゴールではなく、そこから始まる暮らしに思いを馳せ、住む人に寄り添った住まいをつくっていくこと。

風が抜け、光がやさしく差し込み、家族の笑い声が響く場所。
そんな風景を思い描きながら、ひとつひとつ形にしていく。

「住まいづくり」という言葉には、そんな私たちの想いが込められています。

これから住まいを考える方も、今まさに住まいを育んでいる方も。

ふと立ち止まり、「家」と「住まい」について思いを馳せてみると、日々の暮らしが少し違って見えてくるかもしれません。

そして、私たちはこれからも、住まい手と一緒に、その人らしい暮らしを紡ぐ住まいをつくり続けていきたいと思っています。